病気に悩む私が救われた瞬間
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私の難病人生は中学時代から始まりました。
原因不明の難病を抱え、
約20年にわたって、生きる道を迷い続ける日々。
それでも――
まさかこの私が、人生を好転させて
“健やかで、愉しい未来”を迎えるだけでなく、
自らの宿命の道に気づくことになるなんて、
想像もしていませんでした。
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地獄のような日々の始まり
私が発症した自己免疫疾患「クローン病」は、
当時、全国でわずか15,000人ほどの希少な病でした。
そのため診断もなかなかつかず、
さまざまな病院を転々としながら、
治療もままならないまま、全身の症状は悪化していきました。
貧血、腹痛、下痢、虹彩炎、痔瘻、関節水腫…。
それでも私は、無理をして学校へ通い続けていました。
小学生までは、何の不自由もない平和な毎日。
それがなぜ、こんな人生に変わってしまったのか――
自分自身でも納得ができませんでした。
誰にもわかってもらえない
友達と遊ぶこともできず、
ひとり、病気と闘う日々。
どんなに痛くても、つらくても、
最後は自分でしか受け止められない。
誰かに「大変だね」と言われるほどに、
笑顔で返す自分が、どこか惨めで苦しくなっていました。
気づけば、心の奥でこうつぶやいていました。
「どうせ誰も、わかってくれないんだろうな」
そんな気持ちを抱えながら、
折れそうな心を必死に支えて生きていたのです。
初めての入院、同じ境遇の人との出会い
そしてついに、
患っていた痔瘻の症状が悪化し
手術することになってしまいました。
腰椎麻酔をかけるため入院です。
入院は初めてで不安でした。
“痔”という言葉に、正直とても抵抗がありました。
大部屋に入院することになった私は
他人にバレたくない思いがあり、
ちょっとばかし戸惑いました。
痔瘻の場合、
膿を取るためにケアしたり、
座る時に気を使ったりするため
隠しようがないからです。
当然、同じ病棟に入院している
方々に早速バレてしまいました。
でも――
そのときにかけられた、たった一言が、私を救ってくれたのです。
「痛いやろ~」
「若いのに大変ねぇ」
「私も苦労したことあるよ」
他の患者さんたちがかけてくれた言葉に、
私は不思議と“ほっとする気持ち”を感じていました。
病気は違っても、
痛みや不安の感覚を知っている人の言葉には、
何か特別な優しさがありました。

たった一言が、人を支える
もちろん、症状が消えるわけではありません。
でも、あのとき私は救われたのです。
その経験は、私のなかに小さな“芽”を残しました。
それがのちに、「難病サポート事業」へとつながっていくことになります。
まさか、難病の自分が――
誰かの人生に寄り添うような道を歩むことになるとは、
この頃はまだ夢にも思っていませんでした。
でも、闘病の道は、まだまだ険しく続いていきます。
――― EPISODE.2へつづく ―――