免疫は難病患者の敵?味方?
免疫が自身を攻撃する?
免疫細胞は体を護っていると
STEP.1でお伝えしました。
しかし、
自己免疫疾患の場合
免疫細胞が自身の体を攻撃する
という不思議なことが起こります。
免疫力を高めなければいけないのに
免疫が高くなると自分を攻撃する力も
強くなってしまうんじゃないか?
免疫を強くしたい反面、
その攻撃性に恐怖してしまう。
自身の体との付き合い方に
迷ってしまった時期もありました。
ところが、
現在は攻撃的な免疫を抑える必要が
ない状態になっているのです。
この状態を理解するには、
あなたの体内にある免疫細胞について
よく理解しておく必要があります。
大事なことは、
免疫細胞は難病患者にとって
敵なのか、味方なのかということです。
免疫は常にあなたの味方
『自己寛容』という、
自身の体を攻撃しない免疫の
仕組みがあります。
正常な免疫細胞が形成されると同時に
“自己反応性”の免疫細胞も発生します。
自己反応性の免疫細胞は
自身の体を敵とみなしてしまいますが、
胸腺で排除される仕組みになっています。
それでも胸腺をすり抜けてしまったりすると
制御性の免疫細胞が抑え込んでくれます。
この機能があり、ヒトの免疫は保たれます。
では、
自己寛容の仕組みが機能しなくなると、
どうなってしまうでしょう?
ランダムに発生してしまった
自己反応性の免疫細胞は
排除されることも抑制されることもなく、
自身の細胞を攻撃します。
その結果、
炎症などの症状が発生し、
自己免疫疾患の基となってしまうのです。
仮に、
自己反応性の免疫細胞を形成させないような
ことが出来たら病気も治るのでしょうか。
悪いものだけ消し去れたら…
化学の分野を例に考えてみましょう。
2001年、ノーベル化学賞を受賞した
野依教授の研究をご存じでしょうか。
「キラル触媒による不斉反応の研究」
という“鏡像異性体”の作り分けを
テーマにした研究です。
有機化合物には、
同じ組成でも鏡に映した関係性のある
化合物を持つものがあり、
これを鏡像異性体の関係と呼ばれています。
簡単にいうと、
1つの物質でも性質の異なる2面性を
持ったものが存在するということです。
例えば、
AとBという性質があった時に
Aは体にいいんだけど、
Bには毒性があるとします。
「じゃあ、Aの性質だけをもつ物質を
作ればいいじゃない」
と思いますよね。
これを可能にしたのが、
野依教授の研究です。
医薬開発の分野でも現実に
活用されている素晴らしい研究です。
しかし、
不都合なものだけを取り除くことは
良いことばかりとは限りません。
多様性は可能性を拡げる
多様性があるのは
さまざまな環境に適応するため。
免疫細胞にも同じことが言えます。
あらゆる抗原に対応できるような仕組みが
本来体には備わっています。
免疫細胞に
“敵味方という観念”はないのです。
病気を引き起こしている細胞も
本来は体を護るために形成されたもの。
問題なのは、
体を護る仕組みが崩れてしまったこと。
その原因を探るヒントは
あなた自身が握っているのです。
いかがでしたでしょうか?
免疫システムの重要性を
認識できたのではないでしょうか。
では実際のところ、
あなたの免疫状態はどうなのか。
ご自身で把握されたことはありますか?
まずは自分の体の状態をチェックすることも
体調をととのえる為には重要です。
次回STEP.3は
『難病患者の免疫チェック』
をテーマにお話しします。
今回のお話は以上です。
最後までお付き合いいただき
誠にありがとうございました!